この講義では、評論家・岡田斗司夫氏が提唱する**「いいひと戦略」**について学びます。これは、お人好しになることではありません。他人から「いいひと」と誤解されることで、不要な争いを避け、自分の心とエネルギーを守るための、極めて意識的な生存戦略です。この考え方は、バドミントンのメンタルやチーム内での立ち振る舞いにも応用できます。
1. なぜGoogleは天才より「いい人」を求めるのか?
「いいひと戦略」の有効性を示す象徴的な例が、Googleのような世界的IT企業の採用方針です。彼らが最終的に本社で求めるのは、圧倒的な天才ではなく、「Good-natured person(生まれつきいい人)」なのです。
岡田斗司夫氏の解説
なぜかというと、インターネットによってスキルを持つ人材が世界中に見つかるようになった。優秀なヤツは外注でいい。本社に必要なのは、周りの仕事の邪魔をせず、揉め事を起こさず、楽しく協力しあえる人材なんです。優秀な奴らはすぐに競争を始めて、足の引っ張り合いになるからです。
これはスポーツチームでも同じです。個人のスキルがいくら高くても、チームの和を乱す選手は全体のパフォーマンスを下げてしまいます。円滑な協力関係を築ける「いいひと」であること自体が、現代では重要な能力なのです。
2. 達人の危機回避術:「戦わない」という究極のスキル
「いい人って、結局損するんじゃない?」と思うかもしれません。しかし、「いいひと戦略」を実践する達人は、決定的なスキルを持っています。それは「損をしそうになったら、即座にスルーする」という危機回避能力です。
岡田斗司夫氏の解説
トラブルの匂いがしたら、これ以上関わらない。これぞ武道の達人だと思いました。武道の究極は戦わないことにある...直感で争い事を避けるんです。
これは、他人の問題に深入りせず、面倒ごとから悪印象を与えずにすっと身を引く技術です。この「スルーする力」こそが、自分の心を守るための重要な防御術なのです。
3. コーチング的「5つの学び」
岡田氏の講義から、私たちの競技生活や人間関係に活かせる「コーチング的5つの学び」を抽出しました。
1. 「嫌な人になる努力」を、今すぐやめる
頼まれてもいない改善点の提案や欠点の指摘は、相手にストレスを与えるだけの「嫌な人になる努力」。まずは、この無意識の努力をやめることから始めましょう。
2. 「頭の良さ」より「人の良さ」が10倍モテる
頭の良さは尊敬されても、時に煙たがられます。一方、「いい人(だけどちょっと抜けてる)」と思われる方が、人間関係では圧倒的に得。頭が悪いと思われることは、現代ではメリットになり得ます。
3. 否定的な意見は「おなら」と心得る
つい口から出てしまう否定的な態度は、人前での「おなら」と同じ。周りは愛想笑いしても、確実に心の中で距離を置かれています。
4. 「共感→賞賛→応援(のフリ)→忘却」の4ステップ
口先だけでも「わかる」「すごい」と共感し、褒め、応援するフリをし、面倒ならスルー。そして全てを忘れる。このサイクルが「いいひと」を演じる基本です。
5. 自分は「偽物」であると自覚し続ける
この戦略の注意点は、「自分は本当にいい人だ」と思い込まないこと。あくまで戦略として演じていると意識することで、損をしそうになった時に冷静にスルーできます。
4. 今すぐやめるべき「嫌な人になる努力」とは?
「いいひと戦略」の第一歩は、「嫌な人になる努力」をやめることです。以下のチェックリストで、自分の無意識の行動を振り返ってみましょう。
✅ 「嫌な人」になってない?行動チェックリスト
5. 結論:薄い壁で、豊かな内面を守る
「いいひと戦略」は、一見すると冷笑的に聞こえるかもしれません。しかし本質は、不必要な対立やストレスから自分自身を守るための、極めて現実的な「防護壁」を築くことにあります。
言葉の暴力が可視化されやすくなった現代では、正直さがかえって自分を傷つけることもあります。薄っぺらくてもいいから、まずは細胞膜のようなバリアを張り、外部からの攻撃を防ぐ。そうして守られた安全な内側でこそ、私たちは本当に大切なことに没頭できるのです。
岡田氏のメッセージ
"薄っぺらい外壁をまず作らないと、内面が保護できませんよ。"
明日から、少しだけ「いいひと」を演じてみませんか?
きっと、あなたの世界は少しだけ生きやすくなるはずです。
動画で理解を深める
今回の講義の元になった岡田斗司夫氏の解説動画です。
動画で「いいひと戦略」を学ぶ